住宅市場と一口に言ってもセグメントはいくつかあります。業界最大手の大和ハウス工業を例に事業セグメントを見てみましょう。
この記事のもくじ
住宅市場の事業セグメント
戸建住宅
こちらは注文住宅や建売住宅です。
住宅市場では、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング)がトレンドとなっています。国内の住宅・建築物部門のエネルギー消費量が増加傾向を辿っており、資源エネルギー庁によると、他部門(産業・運輸)を含めた全エネルギー消費の約3分の1を占め、1990年から2011年の約20年経過で約33%(住宅部門だけでは約25%)の増加となっているからです。
ZEHとは、
ZEHとは、快適な室内環境を保ちながら、住宅の高断熱と高効率設備によりできる限りの省エネルギーに努め、太陽光発電などによりエネルギーを創ることで、1年間で消費するエネルギー量が正味(ネット)で概ねゼロ以下となる住宅のことを指す。
(中略)
エネルギー基本計画では、2020年までに新築公共建築物等で、2030年までに新築建築物の平均でZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)を実現することを目指している。
また、住宅については、2020年までに標準的な新築住宅で、2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指している。
日本再興戦略においては、2020年までに新築住宅・建築物について段階的に省エネ基準への適合を義務化する。
https://jp.ub-speeda.com/analysis/archive/33/
住宅市場を大和ハウス工業の事例で見てみると日本国内で大きな伸びはありません。
それどころか空き家率は年々増えており、年々減少する人口に対する住居の割合は過剰になっている、と言えます。
賃貸住宅
一方で大きく伸びているのが賃貸住宅用のビジネスです。ただし、これも金融機関の融資の厳格化を受けて新築着工の低迷が続いており減少トレンドが継続しています。
また、空き家率に関しては、実は賃貸用住宅が占める割合が50%もあり、賃貸に対する需要は大きくありません。
マンション
マンションについては、東京オリンピックに向けてマンション価格の高騰はニュース等でご存知かと思います。実際に国交省が発表しているデータで見てみると一目瞭然です。
マンション価格だけが2010年に比べて1.5倍と大きく高騰しているのが分かると思います。駅チカ物件などは値下がりしづらいという、住居を一生モノとし考えず売却時のことも計算に入れてマンションを購入する消費者の増加によりマンション価格が高騰していると思われます。
住宅ストック
住宅ストック事業とは、大和ハウス工業の定義によると
住宅ストック部門では、当社施工の戸建・賃貸住宅を所有されているオーナー様に対し、インスペクション(点検・診断)を通じたリレーションの強化や保証期間延長のためのリフォーム提案を強化してまいりました。
2020年3月期 決算短信 より
です。ようは、リフォーム・リノベーション事業のことです。まだ少ないですがじわじわと業績を伸ばしてきています。
事業施設・商業施設
オフィスや倉庫・物流施設・工場などの事業施設、店舗やホテルなどの商業施設の係数も国交省のデータを参照してみましょう。
これを見ると、オフィスが2019年度第四四半期で大きく落ち着いており、建設ラッシュは一巡したと見ます。
オフィス不動産大手の三鬼商事が公表しているマーケットデータからも今まで下がり続けていたオフィス空室率が2020年2月に底を打ち、上昇に転じています。
新型コロナウィルスの影響で景気が後退したり、テレワークの普及によりオフィス需要が減退したことが影響しているものと思われます。
おさらい
個人用途(戸建て・賃貸・マンション)の住居に関しては空き家率も年を追うごとに増加しており、供給過剰であることが見て取れます。
また、今後のトレンドですが、日本政府はCOP(気候変動枠組条約)で産業革命前からの世界の平均気温上昇を2℃までに抑えることを国際社会と目指しております。その実現のためにはZEHは欠かせない流れになってくるでしょう。
事業施設・商業施設についてZEBの流れは当然のこととなります。
また空き家率も高いことから中古住宅を購入し、リノベーションして使う、というスタイルも増えてくると思います。
ポストコロナの住宅需要について
さて、新型コロナウィルスの蔓延は日本にとっても国際社会にとっても打撃が大きいですが、テレワークの普及が激的に進んだことは唯一評価できることとして挙げられます。
会社や労働者は、家に居ながらにして充分働けることに気づいてしまいました。この流れはもう元へは戻らないでしょう(と思いたい)。
そうなると、住宅に対する考え方、オフィスに対する考え方が変わってくると思います。
例えば、
なぜ人は都内の高価格のマンションや戸建てを買うのか?
- 通勤に便利だから
- 通勤時間を無駄にしたくないから
- ステータス
- 有名校の近くに住みたいから
などなどあると思います。もし週に一度の出社で良ければ、全く違った観点から住宅を選ぶと思います。
週イチ通勤で良かったならば?
- 趣味のマリンスポーツに適した海岸近く
- 趣味のキャンプに適した山間部
- 広い庭付きの一軒家
- 車で移動しやすい高速道路近く
などなど。
また、週イチ通勤でよければオフィスに求められる要件も変わります。
週イチ通勤で良かったならばオフィスはどうなる?
- 従業員全員分のスペースは不要
- ソーシャルディスタンス確保のために割当スペースを今よりも広く確保できるようにする
- 車通勤も許容するために駐車スペースを確保したい(=郊外)
などなど、従業員一人あたりのスペースは10㎡で計算することが多いのですが、1万円〜2万円/㎡x10㎡で10万〜20万円も従業員一人あたり給与以外に支払っています。通勤が不要となれば当然20万円近くコストを圧縮できますので、車やタクシー通勤を許可しても充分ペイすることが可能です。
書斎・ホームオフィスを作るための費用を会社が負担、もしくは国が税金控除などの施策もありそうですね。
ということで、今後の住宅市場のキーワードとしては、
ポイント
- 省エネ住宅・省エネオフィス
- 人工過密地から郊外へ
- リノベーション事業が伸びてくる?
ということでまとめたいと思います。